ゴスペルXボランティアツアー ~報告~ 
(文:NGOゴスペル広場代表 Nana Gentle)
 スリランカのトリンコマリーに、待望の職業訓練(裁縫)センターがオープン。そのオープニングセレモニーへゴスペルを歌いに行くというボランティアツアーに、4名の参加者が集まりました。
  今回のツアーには、行きたくとも行けないという方々もたくさんいらっしゃいました。時間的・金銭的問題もさることながら、この裁縫センターがオープンするトリンコマリーという地域は、内戦中のスリランカにおいて、現在通常の旅行会社がツアーを組んではいけない危険地域に指定されている地域です。外務省や現地日本大使館とも密な連絡体制を保ちながら決行することになりましたが、決して安全を保障できるものではありません。私たちは、このプロジェクトに強い思い入れを持って日本から応援してくださっている方々がたくさんいらっしゃることを胸に刻んで、トリンコマリーへ向かいました。
 

このトリンコマリーの裁縫センターは、国際協力NGOであるTECHJAPANのプロジェクトに、私たちNGOゴスペル広場が資金提供をするという形で実現が決まりました。必要資金を集めるためのイベント「Charity Gospel Marathon2008」企画を立ち上げたのが昨年6月、開催が今年5月、そして今月(2008年10月)裁縫センターが待望のオープンを迎えることができました。
1年4ヶ月の間に、「Charity Gospel Marathon2008」やゴスペルスタジオ「GOSPEL SQUARE」を通して大勢の仲間ができました。ゼロから物事をかたちにするのは多大なエネルギーを要することですが、大勢で力を出し合うことで、本当にできてしまうのですね。それも楽しく!トリンコマリーで出会った方々は、このプロジェクトに関わってくださった皆様にとても感謝しています。本当に有難うございました。

■首都コロンボでの材料買出し
1)コロンボ市内の街並み。写っている赤い車は、現地で最もポピュラーな移動手段「三輪タクシー」。交通ルールはあってないようなもの、道を横切るのもかなりの危険が伴います。排気ガスの量もひどい!
2)3)糸やひもが豊富にそろっている店。裁縫センターのメンバーにまず取り組んでもらう「ブックカバー」用に、似合うひもを探します。いいものがあっても数がない、次に行ったときには全くない、など日本とは違う現地の事情をよく理解しないと始まりません。

4)
生地屋さん。戸棚も立派で生地の種類も豊富にありました。値段は日本円で1メートル150~250円程度。
5)6)刺繍をするためのフレームを買ったお店。入口付近には、スリランカ製のとてもオシャレなピアスやハンドバッグが並べてありました。お店の前ではグレープフルーツ売りのおじさんと男の子が腰掛けており、次々とグレープフルーツを切って差し出してくれました。
スリランカはやはり南国とあってフルーツが豊富。ドラゴンフルーツ、マンゴー、パパイヤなどもとてもおいしかったです!

■ゴスペルワークショップ
 成田空港に集合するやいなや、コロンボ行きの便が3時間遅れるというアナウンスが・・・、急遽空港の展望台でゴスペルワークショップ開催!飛行機を背に、行きかう日本人・外国人に見守られながら、なんとか全曲の音取りを済ませました。
 現地のホテルでも集まって練習。コテージ風の施設だったため周りの部屋が離れており、幸い大声を出しても苦情なし。


 発表する場所には楽器がないため、5人でアカペラで歌います。Amazing Grace、How I Got Over、It Is Wellなどトラディショナルを中心にゴスペル5曲と、最後にCharity Gospel Marathon2008でも歌ったWe Are The Worldのコーラス部分を歌うことにしました。
  トリンコマリーへ向かうバスの中でも練習。到着後もセレモニー開始までバスの陰でひたすら練習!

■オープニング・セレモニー
1)いよいよトリンコマリーの方々と対面!裁縫センターのメンバーが、手作りの花の首飾りを持って迎えてくれました。
2)裁縫センターに場所を貸してくださったアメリカ人のロリオ神父。なんと50年以上もこの土地に住み、英語教室などを開き奉仕活動をしているそうです。民族も宗教も分け隔てなく迎え入れるロリオ神父は、地元の人々から尊敬され慕われている存在だそうです。このような協力者と出会えたことは本当にありがたいですね。
3)裁縫センターとして借りた建物。海辺にあるこの土地は津波で大部分が破壊されてしまったそうです。この建物の中にも、津波で水をかぶって以来止まったままの掛け時計がありました。
4)テープカット、NGO TECHJAPAN代表のドリニさんと共に。


5)セレモニーの進行を見守る、メンバーの女性たち。皆津波で何かしらの被害を受けており、中には家を失った人も。内戦で夫や父親を失った人も多く、職がないと売春や強制労働の犠牲者になりやすいのです。皆この裁縫センターに望みをかけています。
6)新しく揃えた足踏みミシン。開設資金のうち、メインの出費はこれらのミシン購入や、裁縫指導担当者の渡航費。建物取得費用や内装費用はロリオ神父のお陰でほぼゼロにおさえることができたため、資金の多くをこの先1年間の運営費に回せることになりました!
7)地元の伝統である、オイルランプの点灯式。私たちも順番に火を灯しました。

■ゴスペルコンサート
 会場をチャペルに移し、ゴスペルコンサートを行いました。裁縫センターの関係者だけで行う、とてもアットホームなコンサートに。このチャペルは1952年にロリオ神父が建てたもので、神父ご自身もレンガを運んだそうです。
 コンサートでは途中で簡単な曲をスリランカの方々にも覚えてもらい、みんなで歌った場面もありました。


私たちの歌が終わると、メンバーを代表して一人の女性がお礼の言葉をくださいました。「トリンコマリーまでわざわざ来てくださるということが、どれだけ危険なことか、私たちは承知しています。皆様の勇気に感謝します。」「私たちに明るい未来をくださり、本当にありがとうございます。皆様のことをこれからもずっと忘れません。」涙ぐむ彼女の姿に、私たちも思わずぐっと来てしまいました。

■裁縫ワークショップ
1)2)スリランカカレーの昼食をいただいた後は、皆で裁縫の実践トレーニング。ミシンに座るメンバーたち。メンバーのレベルは様々で、中には裁縫教室に通ったことがあるかなりの腕前の人も!
3)渡辺さんの指導に熱心に耳を傾けるメンバーたち。スリランカには裁縫のできる女性は多いのですが、サイズの誤差をなくすことや、生地をきれいに丁寧に扱うこと、縫い目をきちんとそろえることなど、製品として売るものを作るためのポイントを特に教える必要があります。


4)ミシンの初心者には、まず直線縫いの練習。何度もやり直して、だいぶ上達しました!
5)ゴスペルメンバーのTのりやまみりんもお手伝い。渡辺さんから指示を受けて、黒板に寸法を書いています。
6)メンバー全員集合!まずはこのみんなが自立できることが目標。一緒にがんばっていきましょう!
■今後について
最終的には地元に店舗を出すことが出来るのが理想ですが、現在は内戦中で国民全体が貧しく、国内需要が乏しい状態です。そのため、当面は技術力向上を図ると共に、日本やその他の国で販売できる製品を受注してもらえるように考えています。先月早速、シンガポールとオーストラリアにバイヤーを持つスリランカ国内のフェアトレードNGOからサンプルの注文がありました。「お金だけ出して、現地へ行って記念写真を撮って終わり、という支援はしたくない」というTECHJAPAN代表のドリニさんの強い思いに私たちも賛同し、これからも継続してこのセンターをサポートしていく予定です。今後の動きについては、その都度追ってお知らせさせていただきます。

 

 「Charity Gospel Marathon 2008」
 ■主催:  NGOゴスペル広場 / NGO TECHJAPAN   ■協力: Bro. Taisuke Mass Choir

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